北海道留萌市生まれの現代美術家・柿﨑熙(1946-)は、韓国の現代作家と交流した「水脈の肖像展」や、北海道の立体作家を組織した「北海道立体表現展」の中心メンバーとして北海道の現代美術をリードしてきました。
さまざまなジャンルに積極的に挑戦していた柿﨑の転機となったのが、素材としての木(もく)の探求と、趣味のバードウォッチングで出合った自然の造形への関心です。芽吹く葉のやわらかなかたち、カエデ科の樹木の種をつつみこむプロペラ型の翼、その造形の魅力と生命の神秘に惹きつけられたと語る作家は、やがて「林縁から」と題する作品の制作を開始します。カツラの木を彫りだしアクリル絵の具で白く塗った、ふしぎなかたちをしたオブジェは、壁や床にリズミカルに配置されます。種子が風に舞うように配置された「林縁から」シリーズは、力みがなく、軽やかです。その空間の中にたたずむ人は、そこが美術館の展示室であることを一時忘れて、森の奥底に誘いこまれてゆくような感覚を抱くことでしょう。
本展では、初期の平面、立体作品のほか、代表作である「林縁から」を中心に約60点を一堂に展示し、今なお深化を続ける柿﨑芸術に迫ります。
【関連事業】
●アーティスト・トーク
作家自身がこれまでの歩みを振り返りながら、作品について語ります。
日時:2017年2月18日(土)午後1時~2時
会場:道新プラザDO-BOX(札幌市中央区大通西3 北海道新聞本社1階)
参加無料
共催:市民交流プラザ開設準備室(札幌市芸術文化財団)
●ギャラリー・ツアー
学芸員が展示室をめぐりながら展覧会のみどころをご案内します。
日時:2017年2月19日(日)、2月25日(土)、3月4日(土) 各回午後2時~(40分程度)
会場:札幌芸術の森美術館 展示室
参加無料(当日有効の観覧券が必要です)
右図:柿﨑熙 《林縁から―転生》 2014年 木(カツラ)、アクリル絵具