公開日:2024年4月6日
1950~60年代の札幌に、抽象表現主義(絵画からあらゆる意味性を排し、単純な色や形でもって純粋性を志向する芸術)という外的刺激と対峙しながら、ひたすらに内的世界の表現を追求した画家がいました。後に北海道を代表する女流画家となる、若き日の岸葉子(1923- )と八木伸子(1925-2012)です。
岸と八木にはいくつかの共通点が見出されます。一つに女流画家協会(女性画家の地位向上と新人画家の発掘・育成を目的とした公募団体。遠藤彰子も所属。)に所属していたこと。二つ目に白色を基調とし、形の描写が極限まで抑えられた静謐な絵画世界を作り上げたこと。そしてその「白の世界」に至るまでに、色や形がキャンヴァスに溢れる対極的な表現の時代があったこともまた共通していました。
この展覧会では、二人の「白の世界」を様式の到達点と位置づけつつ、これまで顧みられることの少なかった前時代に光を当て、新たな岸葉子像・八木伸子像を提示します。
時代を映す鏡でもありながら個性を見せる窓でもある、二人の知られざる名作たちをご堪能ください。
出品作品
1. 岸葉子《裸婦》(1949年、油彩・キャンヴァス、90.8×72.6cm)
2. 岸葉子《鏡》(1958年、油彩・キャンヴァス、130.0×162.0cm)
3. 岸葉子《青い月》(1965年、油彩・キャンヴァス、130.3×161.7cm)
4. 岸葉子《緑の太陽》(1972年、油彩・キャンヴァス、130.1×161.7cm)
5. 岸葉子《朝の部屋の裸婦》(1982年、油彩・キャンヴァス、162.3×161.7cm)
6. 八木伸子《卓上の静物》(1949年、油彩・キャンヴァス、72.7×60.6cm)
7. 八木伸子《集2》(1960年、油彩・キャンヴァス、82.0×139.5cm)
8. 八木伸子《花嫁の準備》(1965年、油彩・キャンヴァス、130.4×161.8cm)
9. 八木伸子《青い室内》(1971年、油彩・キャンヴァス、116.5×72.7cm)
10. 八木伸子《冬》(1987年、油彩・キャンヴァス、162.0×162.3cm)
(すべて札幌芸術の森美術館蔵)