札幌出身の彫刻家本郷新(1905-1980)は、日本全国の公共空間に多数の野外彫刻を制作、設置したことから「戦後野外彫刻の第一人者」といわれています。本展は生誕120年を記念し、本郷新の入門編として彫刻家の生涯を回顧します。
本郷新の代表作には、戦没学生記念像《わだつみのこえ》、札幌市民に親しまれている札幌市大通公園の《泉》、札幌駅前の《牧歌》、函館市啄木小公園の《石川啄木》、稚内公園の《氷雪の門》などがあります。制作者の名前を知らなくても、多くの人が本郷新の作品を一度は目にしているでしょう。
本展では、本郷新記念札幌彫刻美術館所蔵作品より厳選した初期から晩年までの作品から、彫刻家本郷新の人生の歩みをたどります。野外彫刻のエスキースや「無辜(むこ)の民」シリーズ、テラコッタや木による彫刻、家族をテーマとした作品、病床の中で描いていた《十字架のキリスト》など、彫刻や絵画33点を展示します。
亡くなる直前まで描いた《十字架のキリスト》は、彫刻にすることを意識して構想を練った素描でした。見舞客には元気になったら彫刻にすると語っていたそうです。
最期まで彫刻家であろうとした本郷が、彫刻への愛をとおしてどんなメッセージを遺したのか、ぜひご覧ください。
図版:世田谷のアトリエ1974年(撮影:田村茂)