公開日:2024年8月16日
札幌を拠点に活動する版画家・艾沢詳子は、2006年から本格的に紙とロウを用いた人型のオブジェを無数に配置するインスタレーションに取り組んでいます。彫刻家・本郷新(1905-1980)による作品群「無辜(むこ)の民(たみ)」へのオマージュとして、ティッシュペーパーを縒(よ)ってロウで固めた人型の作品を制作して以降、艾沢は動乱に翻弄される人々へ寄り添う思いを人型のオブジェに託してきました。
本展では、2023年度に新たに当館に収蔵された艾沢による作品群のうち、インスタレーション作品《Happy Re-Birthday to Fukushima + Sapporo》を再構成し、ご紹介します。2011年の東日本大震災とそれに起因する福島第一原子力発電所事故により、親しんだ場所を離れ他所へと移り住まなければならなかった避難者をテーマとした本作は、新たな要素を加えた2024年版として展開されます。
天災や動乱により分断される共同体や土地の断片をたぐり寄せるように一体一体人型を紡ぐ作家の営為を通じて、忘れてはならない記憶を振り返るとともに、抗いがたい力によって翻弄される人間という存在へ思いを寄せる契機となれば幸いです。
艾沢詳子(1949~)YOMOGIZAWA Shoko
北海道夕張郡由仁町生まれ、札幌市在住。1970年代より版画家として活動を始める。
これまで「版の沸騰」(INAXギャラリー、1997年)、「札幌美術展 艾沢詳子 gathering―集積する時間」(札幌芸術の森美術館、2023年)、「共振 本郷新+北海道の現代アーティスト」(本郷新記念札幌彫刻美術館、2024年)などの個展・グループ展をはじめ、国際展にも積極的に参加している。1995年、アジアン・カルチュラル・カウンシルの奨学金により、ニューヨークで研修。2014年、北海道文化奨励賞受賞。2023年、札幌芸術賞受賞。