札幌駅からバスで1時間少々という小旅行に備え、少し早めにターミナルに向かう。定山渓には道内外の彫刻家が観光協会の依頼を受けて制作した、かっぱの像がたくさんあるという。作家たちがユーモアたっぷりに表現したそれらをぜひ見てまわりたい。
定山渓神社前でバスを降り、見返り坂を下りていくと、湯の滝で湯の恩恵を受けているのが『Why are you looking』①。なんとまあこの場所に溶けこんでいること!きっと多くの観光客が彼をファインダーにおさめたことだろう…と思いつつ、私もパチリ。
温泉まんじゅうののぼりに気をとられながら、豊平川にかかる月見橋へ向かうと、途中右手には足湯を楽しめる「定山源泉公園」が。ここには定山渓温泉を拓いた僧、美泉定山の像が湯けむりと共に鎮座している。月見橋の下流側にあるのが『ボクと記念写真』②。彼の手足は、ちょうど顔ハメ看板のようになっている。試しに覗いてみると、向こうに『ミスジョウザンケイカッパ』③の姿が。作家たちの遊び心を感じる計らいだ。せっかくなので、豊平川にグッと近づき二見公園へ。涼やかな清流を背に、岩の上で遊ぶ『ころんころん』④。鮮やかな赤が緑に映える二見吊橋を渡りきると、橋のたもとには『アー・イタイタ』⑤の姿が。四角い部屋の中で台座に乗った彫刻と違い、自然の風景になじむ彼らの姿はなんとも生き生きして見える。
渓流沿いを戻り、再び温泉街へ。岩戸観音堂前には、とぼけた表情が愛らしい『ヨシヤルゾカッパ』⑥が待っていた。となりの「足つぼの湯」でひと休みしたら、かんのん坂をゆっくり上り、道なりに進むと左手にあるのが三笠緑地。ここでは今にも声が聴こえてきそうな『唄う河童』⑦が出迎えてくれた。
さて、今日は歩きやすい靴を選んできたことだし、定山渓ダム方面まで足を伸ばしてみたい。森林浴と渓流の絶景を楽しみながら20分ほど歩くと、定山渓ダム下流園地では『おかっぱ』⑧『洗い髪』⑨の個性豊かな河童たちが出迎えてくれた。少し山の中に入って行くだけで、この街がいかに豊かな自然に包まれているかがよくわかる。温泉街への帰路、錦台公園で『ボー』⑩を、定山渓大橋公園で『みーつけ』⑪を愛でたら、最後のシメとして、定山渓大橋『緑の女神』⑫像へ。この豊かな谷間の景色に、彼女たちの伸びやかな姿はよく似合う。決して大きな街ではないのに、実にさまざまな表情を見せてくれる、定山渓はそんな場所だ。帰りのバスの中で気づいたのだが、定山渓にいる間、私は幾度となく空を見ていた。谷間にいると、人は空を見るのかもしれないな…というのは、愛すべきかっぱ達をめぐる小さな旅で気づいた、もうひとつのこと。