大通公園の散策は西側から始めよう。公園を東端のテレビ塔に向かって歩けば、終着地点はデパートやレストランなどが多彩にそろう中心街。野外彫刻散策とショッピングを1日で満喫できる休日プランが設定できるからだ。

地下鉄西11丁目駅に到着したら、少し北西に向かって北海道文化放送（UHB）の社屋前から散策をスタート。札幌が生んだ日本を代表する彫刻家、本郷新による力強くもしなやかな2体のブロンズ像、『躍進』①と『讃歌』②が、スタートを華々しく盛り上げてくれる。ここから東へ向かい、札幌市教育文化会館を回り込むように南へ曲がると、建物の東側に『洋』③と名付けられたほぼ等身大の女性像が穏やかにたたずんでいる。そして、その視線の先にあるのが『湧水彫刻』④。この大きな作品は、角度によって鮮やかな赤色を見え隠れさせながら、涼しげに水を落としている。大通を東に進み、合同庁舎前にある『北のまつり』⑤へ。見上げた先にあるうねりは、祭りの躍動感なのだろうかと、想像が広がる。大通公園の西12丁目には、札幌市資料館を背に、暖かな季節にはバラの花に囲まれながらポーズを決める、佐藤忠良の『若い女の像』⑥がある。佐藤忠良の作品は市内にいくつもあり、親しみを覚える存在。張りのあるなめらかなラインは、いつ見ても心和ませてくれる。

石山通（国道230号）を越え、北海道開拓に尽力したホーレス・ケプロンと黒田清隆の2人の像を通り過ぎて『有島武郎文学碑』⑦へ。母子のレリーフとともに、札幌にゆかりの深い文豪・有島の小説「小さき者へ」の一節が刻まれている。一方、小さき者＝子どもたちに人気なのが、彫刻であり遊具でもある『ブラック・スライド・マントラ』⑧だ。作者のイサム・ノグチは作品と公園とのバランスを考慮し、西8丁目と9丁目間の道路をなくして公園をつなぎ、そこに同作品を設置するプランを提案。その結果、子どもたちの歓声が絶えない広々とした遊び場が大通公園に誕生した。子どもたちは作家が望んだとおり、この作品をすべり台としてお尻で（！？）楽しんでいる。西8丁目では公園の外にも目を向けてほしい。北側には、愛らしく北国らしい『八丁ダルマ』⑨、さらに北へ1条進むと、札幌テレビ放送（STV）社屋前には和泉正敏の作品⑩⑪が鎮座している。また、公園の南側、東京ドームホテル札幌前には『リ力・立像』⑫、隣接する公開空地には『座「KURA」』⑬もある。ここで大通公園から少し離れて、西6～8丁目エリアにいくつかあるカフェでおいしいコーヒーを飲むのはいかがだろう。この付近にはコンビニもあるので、公園でお手軽に休憩するのもいい。

さて散策に戻り、テレビ塔を目指して東へ進む。西5丁目、4丁目の中心にある噴水も、立派な彫刻と言えるだろう。そうして西3丁目に入ると、札幌で最も有名な彫刻のひとつ『泉の像』⑭が目に飛び込んでくる。3人のバレリーナが天に向かって吹き上がる“泉”のように軽やかでさわやかなポーズをとっている。そのすぐ北側には、没後70年を記念した『石川啄木歌碑』⑮が。脇には啄木が大通公園で売られるトウモロコシについて詠んだ短歌が添えられており、制作当時は啄木像にトウモロコシを持たせるかどうかで話題になったとか。同じく西3丁目にある『牧童』⑯は、戦後、大通公園に置かれた初の作品。クローバーの花輪を手にした少年と子牛がモチーフのロマンチックな作品だ。続く西2丁目には、『花の母子像』⑰と『開拓母の像』⑱という2点の母子像がある。どちらも子どもをやさしくあやす母親の姿を表現しているが、それぞれ異なる味わいを感じてみてほしい。

ところで、西2丁目南側の北陸銀行屋上にも彫刻『鶴の舞』⑲があるのをご存じだろうか。前出の『花の母子像』や、札幌市民ホール前の『希望』⑳と同じ山内壮夫の作品で、いずれも伸びやかな曲線が印象的である。振り返れば、大通公園には人物像から抽象的な作品まで、実に多彩な彫刻たちがレイアウトされている。さまざまな造形美を堪能できる野外彫刻ツアーと言っていいだろう。