8,000本の木が茂る「アートグローブ」は、札幌ドーム敷地内のアートスポットだ。広々とした緑を有効に使った作品や、作品自体が緑や森を意識したものなどさまざま。オリエンテーリングを楽しむようにアートに触れてみよう。
国道36号に近い場所に位置し、札幌ドームに近づくと見えてくる『無重力の玉石』①は、大きな楕円の立体造形。揺らしたり回したり、触って楽しめる作品だ。ドームへの階段を上って北ゲートへ。その左脇に絶妙なバランスで立っている『森の中』②は、さまざまなイメージを広げてくれる。ガラスの屋根が架かる「タウン」を「オープンアリーナ」側へ抜けると、眼下には白黒タイルのフィールド『世界のすみずみ』⑪が。立方体のブロックはベンチを兼ねており、一息入れることもできる。犬の散歩をしている人、遊びに来た近所の子どもたち、さまざまな人々が思い思いに楽しむ姿を見ながら、『フェイジョン』③前に到着。冬になると雪に埋もれ、春の雪解けとともに徐々に芽を出すイメージでデザインされた、コミカルで力強い作品だ。その先にあるのが、石と鉄でできた『Roll Away the Stone/Brixton 8,720km』④。叩いて、押して、楽しい音やリズムを生み出そう。国道36号側を見下ろすと、池の中島に『みつけたくぼみに結実する』⑤が佇んでいる。心のくぼみに舞い降りた気持ちの種が実を結ぶ、というメッセージが込められ、愛嬌のある大きな鳥にも見える。さあ、オープンアリーナ沿いを右回りで進んでいこう。多数のシンプルな立体が宙に浮かぶ『桃色の雲』⑥は、夕暮れ時から夜間にかけてピンク色に自発光する、とても美しい作品。ナイター観戦後に訪れるのもいいだろう。ところで、札幌ドームは2002年のサッカーW杯でも使用された。一見すると人工的なコンクリートの壁『完全な場』⑦の間を抜けると、そのW杯出場32か国の言語で「ありがとう」というささやきが聞こえる。『休息する翼』⑧は、その名の通り一休みしている2羽の鳥を表現しているのだろう。親子なのか、恋人同士なのか…。もうひとつのかわいらしい作品『とり』⑨も必見だ。
ぐるりと1周しながら、ゆったりとした時間を過ごせるアートグローブ。見るだけでなく、手や耳などからも、さまざまなかたちでメッセージをインプットしてくれる作品が並んでいる。春夏には美しく咲き乱れる花々も見ものだ。もし試合観戦やコンサートに訪れる予定があるなら、1時間早く出かけて散策というのも、おすすめの楽しみ方である。