東区にあるモエレ沼は、大自然の営みの中で豊平川の河跡湖として形成された。この馬てい型の沼と内陸の土地に、札幌を緑地の帯で包み込む“環状グリーンベルト構想”の北部拠点として『モエレ沼公園』の造成が計画された。それに先だち、清掃事業により不燃物の処理場として利用され、約270万トンのゴミが埋め立てられた。
1988年3月、モエレを訪れた彫刻家イサム・ノグチは、雪の残る広大な土地とその上に広がる北の空をじっと眺めていたという。彼はこの地に“全体をひとつの彫刻とみなした公園”をイメージし、以前から温めてきた多くのアイディアをふんだんに盛り込んだマスタープランを完成させた。その一月後に彼はこの世を去るが、壮大なデザイン・コンセプトは忠実に継承され、大地に刻まれた夢のランドスケープとしてこの地に姿を現すこととなった。
公園内にそびえる『プレイマウンテン』①の高さは30mにもなり、石積みの斜面の頂上からは、石狩平野を超えて日本海まで望むパノラマが広がる。海のない札幌に、美しい海辺をイメージしてつくられたのが『モエレビーチ』②。サンゴで舗装されたビーチと真っ白なパラソルが並ぶ景色などは、白昼夢の心地さえする。心地よい夢の空間を楽しんでいると、公園の東側にある緑豊かな森の中から緑香とともに子どもたちの歓声が運ばれてくる。その声に誘われて『サクラの森』③という名の森に入ると、さまざまな色と形の遊具で“真剣に遊ぶ”子どもたちの姿が。その森にある7つの遊具エリアを結ぶ園路では、子どもも大人も微笑みを浮かべながら先を急いでいた。園内には他にも、直径2mのステンレス柱を組み合わせた三角錐と芝生のマウンドで構成された『テトラマウンド』④や、公園のシンボルとなる『ガラスのピラミッド“HIDAMARI”』⑤などがあり見どころには事欠かない。ここはまさに子どもにとっても、かつて子どもだった大人にとっても、そして巨匠イサム・ノグチにとっても夢の楽園といえるだろう。