自然の中に息づく彫刻をまとめて楽しみたいならば、ここをおいて他にないだろう。国内有数の7.5ヘクタールの敷地に65作家74点の作品が、起伏に富んだ芝生の上や木立の中にゆったりと設置されている。作品のほとんどが、制作前に作家が現地を訪れて、地形や周囲の状況、気候風土などを考慮してつくられたもの。まさにこの場所のための作品であり、自然に包まれながら絶妙な調和を生んでいる。
1986年の開館から90年、99年と二回にわたって拡張され、日本を中心とした現代を代表する彫刻家の作品を揃える。最後に完成したダニ・カラヴァンの『隠された庭への道』は、全長300メートルにもおよび点在するいくつもの造形物をたどりながら、この地のさまざまな自然の要素への意識が促されるスケールの大きい作品である。砂澤ビッキの『四つの風』は、野外展示には不向きな木を用いて、長い年月のなかでの変化を敢えて受け入れる作品。作者がいう「風雪という名の鑿(のみ)」によって作品は自然へと帰っていく。人生のなかのさまざまな場面を表し続けたノルウェーの彫刻家グスタフ・ヴィーゲランの作品5点は、オスロ以外ではここでしか見ることができないもの。
さまざまな作品を鑑賞してまわるだけではなく、作品のとなりで寝ころんだりお弁当を広げたりするもよし。触れてみてもかまわない。思い思いに作品に接することができるのも大きな魅力である。作品についてもっと知りたい人、楽しみたい人のために、ボランティアによる作品解説があるのもうれしい。
毎年冬には、無料で貸し出しているかんじきを履いて、真っ白な世界のなかひと味ちがった作品と出会うことができる。
野外美術館のほかにも、札幌芸術の森には3点のシンボル彫刻が設置されている。さらに、札幌芸術の森美術館では、国内外の近現代の彫刻の流れをたどる充実したコレクションがあり、年に数回開催するコレクション展などで公開している。