西4丁目電停から、電車はゆるりと出発進行。かつては市内を縦横に走っていた市電も、現在はこの[4丁目〜すすきの]間の一路線を残すのみとなった。
まずは中央区役所前電停で下車、中央区民センターへ。ここには伊藤隆道の『四つの輪』①がある。あたかも円が宙に浮いているかのような、ステンレスの曲線の優美なフォルム。ここから西へ徒歩10分ほどの札幌医科大学にあるのが、同じ作者による『よろこび・愛』②。作品の周りをゆっくり歩くと、見る角度によってガラリと印象が変わる。
西15丁目電停から再び市電に乗り、西に円山のこんもりとした姿を望む西線9条電停で下車。そのまま南9条通を東へ抜けると、石山通との交差点で見えるのが山内壮夫『春風にうたう』③だ。決して大きい作品ではないが、軽やかな温もりが印象に残る。そのまま石山通を南へ向かうと、カトリック山鼻教会の壁面レリーフ『聖テレジア像』④が。ここから西へ戻る途中で本田明二ギャラリーに立ち寄るのもいいだろう。
西線14条電停から市電に乗り、中央図書館前電停で下車。中心部のようなざわめきはもうなく、山がグッと迫ってくる。山鼻サンタウンの一角で、丸山隆の『原風景』⑤を鑑賞。この付近では、山鼻中学校壁面『うねり』⑥(公園から見学可)や中央図書館アトリウム『記号の風景』など、彼の作品が多く点在する。サンタウンに隣接する商業施設では、國松明日香『風のワルツ』も見ることができた。
今日はちょっと“脱線”して石山通を徒歩で南下してみよう。南29条にある山鼻日の出公園で山内壮夫『山鼻屯田兵の像』⑦を鑑賞。同じ作者による南9条緑地のものとは異なる写実的な人物像だ。市電が走る山鼻地区一帯は、明治初頭の開拓当時、屯田兵によって切り拓かれた地。その先人たちの墓地がかつてあった場所がここらしい(現在、墓は平岸霊園に移されている)。南30条の山鼻川河川敷では二部黎『藻岩犠牲者の碑』⑧が見られる。これは、北電藻岩発電所建設工事(昭和11年完成)で、犠牲となった強制労働者の魂を慰めるため平成6年に建立されたもの。いずれも、彫刻という存在に“その場所の過去を形として表現する”役割があることを改めて感じた。
石山通電停から市電路線へ戻る。行啓通電停そばの中島中学校にある坂坦道『協力』⑨は、電車通りから見学可能。ここから徒歩で中島公園へアクセスすることもできるが、せっかくなので再び市電に乗り、資生館小学校北西角で『梁田貞像/どんぐりころころ歌碑』を見る。この童謡を作曲した梁田貞は資生館小学校の前身、札幌創成小学校の卒業生ということだ。市電がぐるりと囲む一帯と、そこに点在する彫刻たちを通して、この街の歴史の足跡を垣間見た気がした。