【幻影HARD】彫刻たちの実話2

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札幌芸術の森美術館学芸員 井上みどりが解説いたします。

 

 

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 札幌芸術の森野外美術館は、自然の植生を保ちながら、草木の成長、四季の変化、植物の美しさがわかりやすく、自然と人工的なものが調和する施設を目指しています。そのため、自然の景観を生かした空間で彫刻を楽しむことができます。
 野外美術館入口の階段を上っていくと、広い空間で様々な彫刻が出迎えてくれます。少し進んでいくと、右手に赤エゾ松の森があります。一見すると作品には見えませんが、この森は環境造形Qというグループが制作した造園的要素をもった彫刻《北斗まんだら》なのです。


 環境造形Qは、関西の彫刻家三人によるグループです。彼らは、個人として活動をする一方で、共同制作による野外彫刻を多数手がけました。彼らが目指したのは、個々の個性を超えた透明希薄な〈開かれた性質を持つモニュメント(記念碑)〉です。彼らの制作したモニュメントは、台座の上にある単体の作品ではなく、人々のコミュニケーションの場そのものでした。


 《北斗まんだら》は、中央に宇宙空間をイメージした黒御影石の北斗七星、それを取り囲むように赤エゾ松八十四本と安山岩四六〇個で構成されています。設置当初、植えられたばかりの赤エゾ松の背は低く、中央の北斗七星は遠くからでも見ることができました。

 

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▲1986年の様子

 

しかし今は、中央部分の存在は森の中に入らないと全く見ることができなくなっています。三十年という時間の経過を、赤エゾ松の成長した姿から感じることができる作品なのです。これが、環境造形Qが目指した時間とともに成長する作品でした。

 

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▲2019年の様子

 

 林の脇にある北極星を表す石も是非ご覧ください。石の表面に作品全体の平面図、その中に「Q」の隠し文字があります。

 

●環境造形Qのメンバー
・山口 牧生(1927~2001)
・増田 正和(1931~1992)
・小林陸一郎(1938~  )
●20年間(1968~1988)の活動を終えて解散
●赤エゾ松84本と安山岩460個の

 「曼荼羅」的な配置

 

 

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